作・編曲家:須田悦弘 コラム「音楽の力」  

「音楽の力」 はじめまして、T&Eコーポレーションで作編曲をしております、須田悦弘です。

前回の鳥海剛史さんに引き続き、今回のコラムを書かせていただくことになりました。よろしくお願い致します。

何を記そうか悩んだ結果。。。大きく出ました「音楽の力」。

初回につき、つい先日、私が感じたことを素直に記そうと思うに至りました。

それは、舞浜アンフィシアターで行われた、東山奈央さんのコンサートでした。

私も「コイノシルシ」「アイノヨカン」という2曲の作曲で参加させていただいているのですが、そのお話は機会がありましたら次回以降に記させていただきます。

演奏された25曲は、どれも素晴らしく。。。

その中でも特に「らぶこーる」では、東山さんが1年半かけて練習してきたピアノの弾き語りを披露、その完成度が半端なかったことで、会場中が感動のるつぼに。

私の目も確実に充血していました。

その次にシットリとはじまったのが「愛・おぼえていますか」でした。

ご存知1984年に発売され、飯島真理さんが歌唱した名曲で、アニメ映画「マクロス」の主題歌でもあります。

この曲で、私は久々に「音に流される」という経験をしました。

ジーンと感動し、心が洗われたような気持ちになり。。。

30年前の楽曲が色あせるどころか、どの曲よりも輝いている。作曲する者としては「悔しい」と思わなければいけないのですが、その気持ちすら覆ってしまうほどの純粋な感動。

私は、こういう体験の後に、ついついポイントで分析してしまう癖があります。

まずはサビのコード進行が、なぜⅠ-Ⅲm7-Ⅱm7-Ⅴ7なんだろう、ということ。

自分だったらⅠ-Ⅵm7-Ⅱm7-Ⅴ7とやるだろう、と。

比べてみると分かるのですが、前者のほうが圧倒的に良い。

メロディが11tnに位置することになり、この緊張感がたまらなく良い。

次にベースライン。Ⅴ7のところ「目と目が?あったときを?」の「を?」の部分で、最低音となるようにアレンジされている。

ここの最低音で、ブーン、ズーン、と会場が振動し、体に届く。

この響きが、振動によるものなのか、感動によるものなのか、もはや判断できない。

吊り橋上で出会った男女が、吊り橋自体のドキドキを相手に対するドキドキと勘違いして恋におちるのと同じ現象か。

次に。。。etc でも、これらは些細なことで、全て後付けだ、ということに実は気付いています。

やっぱり基本はシンプルで愛のこもったメロディ含む音符たちの為せる技なんです。

もちろん東山さんの透明で繊細な歌声がなければ、すべて成立しません。

これが、「音楽の力」。

人と人とを繋ぐ、世界平和だって夢じゃない。

シンプル=手抜きでは決してない。シンプルだからこそ、愛を込めることの大切さを再確認しました。でも、これが途方も無く難しいんですよね。

いつか、並んで演奏されても遜色のない楽曲を書いてみたい、と思った一日でした。

 

      作曲家  須田悦弘コラム  「作曲家の守備範囲」   「作曲家の守備範囲」  作曲コンペを始められる方々へ    

先日、10年来のお付き合いになるバイオリニストの友人に依頼され、作曲しました。   1ヶ月くらいかけていいし、譜面だけくれればいいよ、と言う彼女。

    ここ数年、いわゆるメジャー向けのコンペ活動でしか作曲していなかった私には、あまりに久々なスタイルでした。  

自分でバンドをやっていたころ、作曲してメンバーに譜面だけ渡して、セッションしながら仕上げていた、あの感覚。  

今回も、彼女はメンバーとあわせながら詰めていくので、それで良いとのこと。

    この作曲をしながら、ここ数年、ものすごい作業量を短時間でこなしていることに気付きました。    

ご存知のように、作曲コンペでは、譜面を納品しただけでは土俵に上がることすら、出来ません。  

  曲の長さこそ、ワンコーラス、もしくはワンハーフサイズと呼ばれる2分程度のものでOKですが、   市販されている楽曲に近い音質まで仕上げた、「音としての楽曲」を作る必要があります。

  納期は、数日です。コンペが重なることもザラなので、違う曲を同時並行で進めることもあります。    

市販されている楽曲に近い音質まで仕上げる、ということは。。。  

もちろんメロディとコードを考え音符を書く(頭の中だけで、実際に書くことはほとんどないですが)。  

楽器を演奏する、DTMで打ち込む。メロディ、ドラム、ベース、ギター、ピアノだけではなく、 管弦楽のアレンジ、シンセの音づくりやフレーズの組み立て。ループやSEをちりばめる。  

退屈な楽曲にならないように構成を練り、必要があればブレイクや変拍子など考える。  

歌詞を仕上げ(私は、作詞家さん、というか漆野さん。にお願いすることがほとんどです)、   ハモりも考え、歌を録音し(鳥海さんのコラム参照)、ピッチやタイミング補正を行う。   エフェクターで音圧を調整したり音場を作ったり。。。そしてTDしてmp3ファイルに書き出す。  

っと、こんな具合です。これを、2~3日の間に行うことになります。    

本来の意味での「作曲=音符を考える」に使っている時間は、 そのうちの10~15%くらいではないでしょうか。  

ということは、1曲あたり2時間くらい、という計算になろうかと思います。

    作曲コンペを始める前にこの現状を知っていたら、おそらく私は挑戦しないで諦めていたと思います。

  だって、アマチュア時代には、この作業に1?2ヶ月かけ、完成したらメンバーと喜びを分かち合う、というサイクルでしたし、それだけの充実感が味わえる作業量でしたから。  

それを数日でなんて、そんなこと、出来る訳がない、と考えたと思います。

    そこまで深く考えずにコンペ活動を始めた私ですが、これが、いつのまにか出来るようになるから不思議です。  

(作曲者とのスタイルとして、これが良いのか悪いのかは、話がややこしくなるのでパスいたします)  

近いうちに、どうやって時間をやりくりしているのか、続きを記そうと思います。