Dメロとアウトロ
Dメロは、楽曲をさらに盛り上げたり、物語に変化をつける場所だ。曲全体がクライマックスへと向かうための“最後の助走”のようなセクション。私は、そんなDメロのように、自分自身の作詞人生も変化と挑戦の連続だと感じている。
作詞が完成したと思う瞬間は、「やり切った!」という高揚感に包まれて、冷静な判断ができなくなる。だから少し時間を置いてから、自分の歌詞を改めて見直すようにしている。距離を取ると、また違った視点で見えることがあるからだ。
自分で「これで納得」と思える場所が、作詞の終わりだと思う。でも、詰めだしたらキリがない。たとえば、「会いにいくよ」か「逢いに行くよ」か。「会いにいくね」か「会いに行こう」か。ほんの一文字の違いにも、長い時間をかけて悩む。英語を大文字にするか小文字にするか、など…
今回、コラムのタイトルのアウトロの部分も、初回のコラムをIntroで綴ったので英語にするか迷ったのだが、パッと見DメロとOutroだと感覚的に嫌だったのでカタカナ表記にしてみたり…。思いつきで書き始めてしまった結果の代償である。
自分で歌ってみて歌いにくいと感じる場所。読んで違和感を覚える場所。考え出すと、本当に終わりが見えなくなる。
1つのコンペに対して何パターンも書くこともあるが、その善し悪しを決めるのは自分自身だ。楽曲コンペの場合、1番が仕上がっていれば提出としては十分。けれど私は、2番の展開を想像しながら、提出しないまま最後まで書いてしまうことが多い。完璧に“無駄な時間”かもしれない。でも、その時間が好きでやめられない。
完成したデモ楽曲を聴くのも、私の大切な時間だ。採用されたとしても、音ノリの都合などで歌詞が変更になることは多い。けれど、なぜそうなったのかを考えて、自分なりに答えを見つけるようにしている。不採用だった時も“答え合わせ”はできる。他の作詞家の方が書いた歌詞を何度も聴き、何度も見て学ぶ。自分とは違う発想、自分には浮かばなかったフレーズ。そうした良い部分を吸収したいと思っているし、心から好きになってリピートする曲もたくさんある。
どこまで触れていいのか分からないが、リリースされた曲の中で特に印象に残っているのは「アリスの本能」や「Bad Boy」。デモ完成版を何度も聴きながら、「こんな風に仕上げたい」と胸が高鳴った。
他にも好きな完成版は多いが、リリースに至っていない曲のタイトルはここでは伏せておく。ただ、その曲たちに私はいつも元気をもらっている。この場を借りて、T&E所属の作家の皆さまに心から感謝を伝えたい。
コンペに参加してくださっている作曲家様、作詞家様、本当にいつもありがとうございます!
私が準採用枠でコンペに参加させていただくようになった当初は、正直、悔しさのほうが強かった。デモにも選ばれず、コンペの案内も来ない期間が続くと、「私にだけメールが来ていないのでは?」「私に才能なんてあるんだろうか?」そんな疑心暗鬼を繰り返す日々が続いていた。
その頃、ちょうど『SHIROBAKO』というアニメを観ていた。アニメ制作会社を舞台にした物語で、声優を目指す“ずかちゃん”というキャラクターが出てくる。仲間が次々に夢を叶えていく中で、彼女だけがなかなか芽を出せない。当時の私は、その姿に自分を重ねて見ていた。
そんな時、「あと数回コンペに挑戦してダメだったら諦めよう」と心に決めた。しかしその直後、初めてデモ完成版に採用してもらえたのだ。やっぱり、夢は諦めちゃダメだ。その瞬間、そう強く思った。
それでも、不採用の日々が続くのは日常だ。落ち込むことが“デフォルト”になる。けれど、それに慣れるしか気持ちを保つ方法がなかった。もしあの時、諦めて何もしなかったら、私の作詞家人生はサビを迎えずにアウトロが流れていたかもしれない。
T&E Corporationに辿りつけたのも、きっと何かの縁。作詞家という仕事は、まさにTry & Errorの連続だ。辛くても、試行錯誤を繰り返しながら進むしかない。
他の人の才能が眩しく見えることもある。でも、諦めた瞬間に夢は終わってしまう。諦めない限り、夢はそこにあり続けるし、叶える可能性もきっと残っている。そう信じていないと続けられないのである。
コンペに参加する際は、対象アーティストの楽曲をなるべく聴くようにしている。その中で出会い、好きになった曲も多い。個人的にDメロが印象的だと思う一曲を挙げるなら、i☆Risの「ありえんほどフィーバー」だ。
この曲はセクションがとても多い。イントロ/A/A´/B/サビ/2A/2B/2サビ/D/大サビ/アウトロ……と、どのパートにも歌詞がついている。Dメロのほか、大サビの後にはアウトロ的なパートもあり、最後までエネルギーを感じる一曲だ。イントロからアウトロまで、どこを聴いても元気をくれる曲なので、ぜひ聴いてみてほしい。
きっと、今の私はまだDメロの途中にも至っていないのかもしれないが、私の作詞家人生のアウトロは、もう少し先でいいと思っている。そして、終わる時が来たなら、フェードアウトではなく、銀テープや花火がバーンと打ち上がるような、そんな気持ちのいい終わり方をしたい。
Introから書き始めた、未熟なこのコラムを読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。独学で続けてきた私の作詞論が、誰かの役に立てるのか正直分かりません。
偉そうなことを言える立場でもないし、いつも自信がない超絶ネガティブでド陰キャな私が、ちょっとだけでも偉そうに見せようと、「〜だ。」とか「〜なのだ。」とか、いつもとは全く違う口調でコラムを書いてきたので、そろそろ限界です(笑)
ただ、音楽が好き。作詞が好き。その気持ちだけは止められず、今の私がいます。これからもT&E所属の作詞家として、試行錯誤を繰り返しながら、前へ進み続けていこうと思います。
この道を共に歩む作家の皆さん、そして読んでくださったあなたへ。心から、ありがとうございます。本当に貴重な機会を頂き感謝しています。
今後もコラムを続けていくかどうか、今はまだ正直分かりませんが、もう少し脱力した“素”に近いコラムにしてもいいのかな、と感じています。
またいつの日か!
 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				