作曲家 須田悦弘コラム

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(続)歌舞伎座で歌舞伎を見て参りました ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

皆様こんにちは、須田です。

先週、歌舞伎を見て来たお話を書きました。 今週から3回にわたって、その音楽について書いてみます。

雅楽に関しては全く知識がございません。 そもそも「雅楽」と括ってしまって良いのかどうかも分かっておりませんので、 以下のことは全て、私が聞いて感じただけのことを整理したものです。

もしご専門の方がいらっしゃったら、ご指摘いただければ非常に有り難いです。 また、雅楽に触れる機会というのは意外にもあるもので、 特に年始のテレビや神社などでは耳にしますね。 ですので、以下に書くことは、歌舞伎を見に行って感じたことではなく、 普段から感じていたことを、この機会に整理してみた、といったニュアンスです。

まず、決定的にポップス、ジャズ、ロック等と違うのは、旋律だけだということ。 歌と三味線、といったパートが複数ある場合でも、複数の旋律が存在するだけで、 コードやベースという概念が非常に希薄です。

そして、その旋律ですが、ほぼほぼ、Phrygianスケールから、 m3とm7を除いた音で歌われていました、少なくとも当日は。 ♯♭が付かないキーで言うなら、ミファラシレです。「さくらさくら」もそうですね。 浅知恵で調べたら、「都節音階」というそうですが、合ってますでしょうか。 R,♭9th,P4th,P5th,♭13th だけ、ということになります。

これはでは、コードが、少なくとも主流の3度堆積のコードは1個しか作れません。 レファラ、だけですね。これは、コード進行が存在出来ないということです。

しかも、これをPhrygianスケールの省略とするなら、 ♭9th、♭13thはアボイドノートなので、長く伸ばすことができません。 メロディとしてデンと使える音はR,P4th,P5thの3つだけ、ということになってしまいます。

ここまで見ると、完成された、別の良い方をすると発展性の少ない音楽に思えます。 しかし、ここで考えを止めてしまっては勿体ない!

と、続きはまた来週、書かせて頂きます。  

 

 

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(続々)歌舞伎座で歌舞伎を見て参りました ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

皆様こんにちは、須田です。

さて、歌舞伎編、今週と来週、あと2回で〆と致します。

よろしくお願い致します。

R,♭9th,P4th,P5th,♭13th 先週、これをミファラシレと書いてしまいましたが、すみませんミファラシドの間違いです。

さて3度が無いので、西洋音楽的に見れば、長調か短調か不確定なはずなのですが、 これが不思議と、ずっと暗く感じるんです。

なにも、舞台の雰囲気が暗いとか、歌詞が暗いというわけではありません。 そもそも、歌詞が何を言っているのか私には分かりませんでした。

気付くのが、それでも一瞬、お茶目に聞こえたり、おどけているように、 つまり少しだけ明るく感じることがあります。

これも、歌い手さんの顔が少しおどけるから、じゃないはずです。 逆に、おどけたくなる旋律だから、おどけた顔になるのでしょう。

ではナゼ。 その時って、一瞬、ファ♯や、ド♯を使っているんですよね 西洋的にいうと、一瞬Drianも混ざってくることになりますね。

Drianというのもm3を持つため暗い調という位置づけですが、 こうなってくると、音楽の「明るい、暗い」を決めるのは、 必ずしも3rdだけではないんじゃないか?となって来ます。 想像してみてください。ミファミドシ、と、ミファ♯ミドシ、を。 ♭9が9になることで、少し明るく感じるのです! ♭13と13も同じです。シドシと、シド♯シ。

これは、西洋音楽だけを聞いていたら気付けなかった感覚でした。 3rdがない「都節音階」に触れて初めて、気付くことができたものです。

ということは、本当の「短調」として適任なのは、Aeorianではなく、 Phrygian、はのではないか。となってきます。 どこにもメジャーインターバルが存在しません。 R,♭9,m3,P4,P5,♭13,m7 いかがでしたでしょうか。最高に暗い音階。

そして、最後に一番大事な考察なのですが。 また来週、記させて頂きます! 写真2_8用   須田悦弘